#083 自宅を建てようとお考えのあなたへ vol.3 上がり框の高さ?
2020.06.01
昔、世界的に著名な建築家が来日し、日本建築の特徴を問われたとき、「靴箱」と答えた・・・という話があります。欧米人からすると、玄関で靴を脱ぐ行為は奇異に映るのでしょうか。室内で靴を脱いで過ごす習慣は、東南アジアや東アジアに多く見られるとのことですが、それは高温多湿な気候に由来すると思われます。
玄関は靴を脱ぐ・履くための場所です。また、靴のエリアとスリッパ(または素足)のエリアのボーダーラインが上がり框(かまち)ということになります。その高さは昔の農家の土間のように40~50cmの時もあれば、マンションのように2~3cmの場合もあります。建築基準法では木造1階の床は地面より45cm以上の高さを求められますが、湿気が上がってこないような設えがあれば45cm以下でも構いません。つまり、上がり框の高さはどうにでもなります。それでは、上がり框はどれ位の高さが良いのでしょうか?
高齢者が靴を履くとき、上がり框が高い場合は一度床に座りこみ、上がり框部分を椅子のようにして靴を履きます。また靴を脱ぐときは逆の動作になります。高齢者には床に座る・立ち上がる動作が億劫なようです。「高い上がり框は椅子のように座れるから安心」とおっしゃる方もいますが、それなら下図のようにベンチを別に作る方法もあります。そのような訳で、高齢者(将来の自分)を考えると、低い上がり框がお勧めです。更に、車椅子生活になっても大丈夫なのは、何より心強いですね。
でもでも、全く別な考えもあります。
玄関は外と内の結界です。そこでは明らかに気持ちが切り替わります。外出しようとするとき気持ちが「キリッ!」とするもの、家に帰ってきて「ホッ!」とするのも玄関です。従って、靴を履く・脱ぐ行為がしっかりしているほど、その気持ちの切り替えがしっかりできます。そう考えると、上がり框はしっかり高くしたいと思います。
結局のところ、上がり框の高さに正解はありません。また、敷地や建築全体を考える中で、上がり框の高さも検討されるべきでしょう。このようなことを信頼できる建築家と一緒に考えてみるのも楽しいと思いませんか?
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千葉・柏の住宅設計事務所 古里設計
(建築家 古里正)
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