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千葉県立柏の葉公園は都市公園として市民の憩いの場となっているが、和風と洋風の庭園形式の混在、更に建築の発注年度・設計者等の違いによる建築ボキャブラリーの混在が感じられる。また、このテニスクラブハウスは公園の縁辺部に位置し、公園に隣接するモダンな建築群に対しても整合性を求められる。そこで、既存ピクチャレスクのボキャブラリーの混在から逃れ、隣接する建築群に対し整合性を保ちつつ、独自の「かたち」を求めた。
求められた諸室は更衣・シャワー、研修室・倉庫、便所、ラウンジ等である。プライバシーを強く求められる機能の中で、唯一開放的なラウンジ空間をテニスコートのある外部空間と繋ぐために、大きな軒下空間を作り出した。この軒下空間の中間領域を設定することにより、「内部空間としてのラウンジ」-「中間領域としての軒下空間」-「外部空間としてのテニスコート」の連続性を確保しようと試みた。更に、その屋根部分に開口部を穿ち、直下にシンボルツリーを植え、外部と内部の境界を意図的に曖昧にすることにより、空間の連続性を強調した。
また、クライアントから「軽い屋根」の表現を求められたことを契機に、屋根と壁を全く分離した構造形式を提案した。これは、プライバシーを強く求められる諸室にも充分な採光を確保でき、居心地のよい内部空間を実現できた。 クラブハウスの屋根は緩やかな片勾配を有し、公園側の軒は低く押さえられ、控えめな存在となる。また、テニスコート側には大きく開いた形となり、弧を描く天井の形態とも相まって、存在感の強い形態となった。