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#149 「デ・キリコ展」を観て

2024.08.14

 

左「通りの神秘と憂愁」1914、右「ヘクトルとアンドロマケ」1917

先日、上野で「デ・キリコ展」を観てまいりました。

形而上絵画と言われても難しいですが、とにかく不思議な内容です。上掲図のように歪んだ風景や脈絡のないモチーフが描かれています。

その後キリコは古典絵画の影響を強く受け、自身の画風を大きく変えます。下掲図はその一例で、妻のイザベッラを描いています。

「風景の中で水浴する女たちと赤い布」1945

晩年になってから、キリコは若い頃描いた形而上絵画の複製を描き始めます。下掲図「不安を与えるミューズたち」は1910年代から60年代にかけて何枚も描かれて、ほぼ見分けがつきません。専門誌でも今回の展覧会の解説でも、キリコはシュルレアリスムの画家たちの求めに応じて描いたと説明されていますが・・・画家が他の画家に複製を依頼するとは何か不自然な気がします。

「不安を与えるミューズたち」とにかくセルフコピーされ続けています。

10年程前に放映された「日曜美術館」ではこの件に踏み込んでいました。画家であり美術誌編集者でキリコと親交の深かったエツィオ・グリバウド氏によれば、キリコが若い時描いた形而上絵画が当時、相当な高値となり、多くの画商から複製を求められたとのことでした。妻のイザベッラは複製を描くようキリコに強く迫り、更にエツィオ・グリバウド氏にキリコを説得するよう頼みます。

自己模倣を強いられたキリコですが、モチーフや表現が僅かに変えられているところに、画家としての苦悩と拘りを感じます。しかし、その後アンディー・ウォーホルにより「一つのイメージを繰り返しながら変わってゆくことこそアートである」と絶賛され、ポップアートの先駆とされたことは何とも皮肉に感じます。

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