home /latest news



「居心地のいい場所」−6
『満足』のかたち - 四万温泉 積善館 -
2010.01.30
text & illustrated by H.Narumi

直行バスを降りて数十メートル歩くと、赤い橋のむこうには別世界が広がっていた。 積善館は湯宿建築として湯治文化を300年以上伝える『本館』、昭和初期の和風建築、桃山様式の『山荘』、そして鉄筋コンクリート造の現代建築『佳松亭』からなる宿だ。

 「少し前までは“古臭い”と言って嫌われたんですよ。今では新しいお部屋より人気があります。」そう言って案内された『山荘』と呼ばれる和室は文化財の宿にふさわしいものだった。脱衣場と浴室の間に仕切りがないことに驚き、昭和初期のミストサウナにわくわくし、源泉かけ流しのお湯にたっぷり浸かる。

 朝食の際、常連客らしい老夫婦に年配の従業員が挨拶に来た。「○○様がいらしていると聞き御挨拶だけでもと思いまして…」 姿が見えず心配していたと言う客に「もう年ですから中(厨房)で働いています。」と頭を下げた。 客の「元気でね。」という励ましににっこり応える…。

 建物も温泉も凄いけれど“これだな…。”と思ってしまう。 『お部屋係』として渡された名刺に“私がおもてなしする。”という意思を感じ、団体客はとらずに、来て頂いたお客様には女将直筆の礼状を出すという方針に心が動く。

 “もの”が安さだけの基準で消費されていく時代に300年以上続いてきた宿の目指す『満足』のかたちにほんものだけがもつ凄さを感じた…。





home / latest news