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モノのない快適
−私の好きな一冊の写真集−
2006.08.05
text by T.Furusato

写真集「地球家族」世界30か国のふつうの暮らし、著者:ピーター・メンツェル、TOTO出版・・・版権の関係でこれ位の掲載の仕方が限度だと思います。
日本の家庭のモノの多さは、世界の中で異様にさえ映ります。


 「申し訳ありませんが、家の中の物を全部、家の前に出して写真を撮らせて下さい」と言いつつ、その写真家は世界30か国の中流家庭を巡り、写真を撮り続けた。この写真集には世界の国々の生活様式がリアルに写し出されている。豊かな国の家族も貧しい国もそれぞれに幸せそうに見える。個人的には特にブータンの家族が最も印象深い。その大家族は祭具と僅かな食料と食器、原始的な農器具などしか持ち合わせていないにも係わらず、とても幸せそうに見える。

 特記すべきは日本で、家財の数は世界の中で異様なほど際立っている。高級外車4台を所有するクウェートの家族に比べても100倍はある。しかし、そのどれもが安物なのだ、世界中でプリント合板でできた家具は見あたらない。特に戦後の日本人は「モノがあれば幸せ」と思ってきた節がある。例えば「カー・クーラー・カラーテレビ」など時代とモノが直結している。実際のところ日本の普通の家庭は上の写真のような状況が大多数だろう。

 住宅などを設計していても他の建物でも、私はこの「モノがあれば幸せ!」の価値観?と否応なく対峙することになる。古里設計は「居心地のいい場所」を創ることを目指している。それは「美しい」形・空間を求めることにもなるが、「美しい」はしばしば幾何学的・抽象的な形態で、少なくとも煩雑なモノは見えないように設計する。モノ・カタチを整理し、どれだけシンプルにまとめられるかが「建築」としての勝負の分かれ目であるように思う。モノやカタチを整理することはそこでの人の行動や人と人・人とモノの関係を見直すことである。放っておけば煩雑になったり、モノで溢れる場所に秩序を与え、快適な人と人・人とモノの関係を生み出すことこそが設計を通して実現したい「居心地のよさ」である。

 「モノのない貧しさ」から脱した「モノの溢れる豊かさ」の先には更に「モノの整理された快適さ」があるように感じている。




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